深夜百太郎 入口(舞城王太郎)-ネタバレ
ショートショートホラー。Twitterで連作していたのかな?
21/01/11-21/01/19
平日少しずつ読み進めた。
高校の教科書で読んだ夏目漱石「夢十夜」の構成が好きなのだけど、一太郎、二太郎……と続く章でそれを思い出した。
以下印象に残った作品。
(21/01/11に読み始めたけれど早速ブログの存在を忘れていた)
21/01/12
【十二太郎 笑う鬼】
鬼に取り憑かれて?毒親になった母親。
この作品の母親は″鬼″に憑かれて息子を責め、自殺未遂を三度もさせるまでになる。
神社でお祓いを受けてまともになった自分を空っぽになったと感じ、鬼の高揚を懐かしむ。
「鬼になったのは私で、鬼になれるのはそもそもどこか鬼なんだろう。」
わたしは自分にいくつもの側面があって、コミュニケーションを取るときには必要に応じてそれぞれの面を誇張して扱っているように感じている。面接なんかで自分を大きく見せるにも、全く自分にないものは見せられないと思っている。最後の一文は、作中の母親にもそのような側面があって、それが増幅された結果が鬼だったことを示すのだろうか。
【十三太郎 あじさいの中】
近づくなと言われたあじさいの中を覗いたら綺麗な女がいて関係を持ち、妻子に申し訳ない取る思いながら家に連れ込んだら全員消えて延々続く梅雨の中で女と暮らす羽目になる。
女は意味のないひらがなの羅列しか発さないのだが、数文字のひらがながこんなに怖く感じるとは。
21/01/13
【十八太郎 河童の地蔵】
河童の話多いな。福井って河童伝説でもあるんだろうか?
河童の地蔵を主人公のために持ち帰ろうとした男の子が、呪いのためか片目が潰れる。主人公は眼球が無くなって瞼の皮膚がぴったり閉じたその眼窩をもつ男の子が俄に気になるようになって、太鼓のような目元を叩かせてね、なんて声をかける。
ちょっとフェティッシュな終わり方で好き。
【十九太郎 ファミレスの子供】
ファミレスで働く主人公。バイトのおばちゃんの8歳で亡くなった息子が深夜2時に夜な夜な現れる。おばちゃんがシフト外れてからも変わらずに。バイトの若い女の子とのトラブルがあり、女の子は幽霊の息子を連れ去ろうとするが他のバイトに阻止される。退店して行った男の子に、もうお母さんは夜来ないよ、と伝えた方がいいだろうかと言う店員に、主人公はせめて夜の2時の外よりは優しいファミレスであって欲しいと思う。
死後幽霊に絶対なりたく無いのだけど、もしなったらこれくらい優しくされたい。
【二十二太郎 軽トラの荷台】
軽トラの荷台に突然全裸で胡座を組んだ男が現れる。時を同じくして横を流れる川に化け物が。念仏を唱えながら化け物から逃れて人里を目指すが、山道は延々続き化け物は追ってくる。どうやら荷台の人外に守られているようだが、一向に事態が好転する気配も無く、「化け物が俺を諦めるまで、あるいは俺が俺を諦めるまで、もしくは、この長い長いひたすらの夢の中で生きたいももういいもなくただ俺がゼロになるまで。」続くようだ。
なんだか別に生きたくもなく寧ろ偶に死にたいくらいの気持ちで生きていることと、引用部にシンクロを感じた。
明日は二十五太郎からなんだけれど、猫が出てくる話のよう。猫好きなので楽しみ。
21/01/14
別に書いたが気分が頗る悪い。
二十七太郎がとても良かった。